スマホでの表示速度がSEOの命運を分ける:Core Web Vitals改善の技術的アプローチ
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結論から申し上げます。現代のSEOにおいて「コンテンツの質」と同じくらい重要なのが「ページ表示速度(Core Web Vitals)」です。特にスマートフォンでの表示が3秒以上かかると、53%のユーザーが離脱するというデータがあります。
どれだけ素晴らしいデザインや文章を作っても、表示されなければ読まれません。今回は、Googleが検索順位の指標として採用している「Core Web Vitals」の基礎と、私たちが普段行っているWordPressおよびサーバーサイド(Xserver)での具体的な高速化施策について解説します。
Core Web Vitals(コアウェブバイタル)の3つの柱
Core Web Vitalsとは、Googleが定めた「ユーザー体験(UX)の健全性」を測る指標です。主に以下の3つで構成されています。
- LCP (Largest Contentful Paint):メインコンテンツの表示速度。2.5秒以内が理想。
- INP (Interaction to Next Paint):応答性。ボタンクリック等の反応速度。200ミリ秒以下が理想。
- CLS (Cumulative Layout Shift):視覚的な安定性。読み込み中にレイアウトがガタつかないか。0.1以下が理想。
これらを改善することは、単にGoogleのスコアを上げるためだけではなく、実質的なコンバージョン(問い合わせや購入)率の向上に直結します。
技術的アプローチ1:画像の徹底的な最適化
Webサイトの容量の多くを占めるのが画像データです。単にサイズを小さくするだけでなく、次世代フォーマットへの変換と読み込み制御が必須です。
WebP(ウェッピー)形式への変換
従来のJPEGやPNGではなく、圧縮率が高く画質を維持できるWebP形式を使用します。WordPressではプラグインで自動変換も可能ですが、画質劣化のリスクがあるため、SPROUTでは制作段階で適切な圧縮率をかけた画像を生成し、pictureタグを用いてブラウザ対応状況に応じた出し分けを行う場合があります。
Lazy Loading(遅延読み込み)の制御
画面外にある画像を後から読み込むことで、初期表示速度を上げます。現在はブラウザ標準のloading=”lazy”属性が利用可能ですが、ファーストビュー(最初に表示される画面)にある画像にこれを設定してはいけません。LCPの悪化を招くからです。適切な除外設定が必要です。
技術的アプローチ2:Xserverの環境最適化とキャッシュ戦略
SPROUTで採用しているエックスサーバー(Xserver)は非常に高速ですが、設定次第でさらにパフォーマンスを引き出せます。
ブラウザキャッシュの設定
サーバー側の設定ファイル(.htaccess)を編集し、ブラウザキャッシュの有効期限を適切に設定します。これにより、2回目以降の訪問時の表示速度が劇的に向上します。以下は設定の一例です。
<IfModule mod_expires.c> ExpiresActive On ExpiresByType image/jpg "access plus 1 year" ExpiresByType image/jpeg "access plus 1 year" ExpiresByType image/gif "access plus 1 year" ExpiresByType image/png "access plus 1 year" ExpiresByType image/webp "access plus 1 year" ExpiresByType text/css "access plus 1 month" ExpiresByType application/javascript "access plus 1 month" </IfModule>
HTTP/2の活用
一度の接続で複数のリクエストを処理できるHTTP/2プロトコルが有効になっているかを確認します。これにより、多数の画像やCSSファイルを同時に読み込む際の遅延を解消します。
懸念点:過度なプラグイン依存のリスク
WordPressには「入れるだけで高速化する」とうたうプラグインが多数存在します。しかし、安易な導入は推奨しません。
理由は、プラグイン同士の競合(コンフリクト)により、かえって動作が重くなったり、レイアウト崩れを引き起こしたりするリスクが高いためです。特にJavaScriptの圧縮や遅延読み込みを強引に行う機能は、お問い合わせフォームの動作不良など、致命的なバグを生む温床になります。
私たちは、プラグインは最小限に留め、可能な限りテーマファイル(functions.php等)やサーバー設定レベルで軽量化を行うことをポリシーとしています。これが、長期的に安定して稼働するサイト作りの秘訣です。
まとめ:速度改善は継続的なメンテナンスが必要
Webサイトの高速化は一度設定して終わりではありません。コンテンツの追加やプラグインの更新によって、数値は変動します。
SPROUTでは、制作時だけでなく保守運用の中で定期的にPageSpeed Insightsなどのツールを用いて計測を行い、ボトルネックがあればコードベースでの修正を提案しています。「サイトが重い気がする」「スマホでの離脱率が高い」とお悩みの場合は、まずは現状の診断からご相談ください。